2017年05月04日

やどりき水源林のカモシカとムササビ

春から初夏のやどりき水源林は、鳥のさえずりや、カジカガエルの鳴き声でにぎやかです。
うまくすると、カモシカやムササビにも出会えるかもしれません。
会員がニホンカモシカ、ムササビの写真を撮ってきてくれましたので、紹介したいと思います。
(撮影:ムササビ5月3日、ニホンカモシカ4月30日)
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【ニホンカモシカ】
カモシカというと奥山に生息しているイメージがありますが、やどりき水源林でも3月から5月ぐらいにかけて、それほど珍しくなく目にすることができます。
ニホンカモシカがこの時期に麓近くまで降りてくるのは、芽吹きの時期に合わせているのではと考えられています。新芽を食べに来ていて、だんだん山の上にあがっていき、夏以降はほとんど目にすることはなくなります。

ニホンカモシカはシカ科ではなく、ヤギに似た反すう偶蹄類ウシ科に属する日本固有種です。 昭和9年に天然記念物指定され、昭和30年には特別天然記念物に指定されました。
シカとの違いは、シカはオスだけが枝別れした角を持ち毎年生え変わるのに対し、カモシカは雌雄共に角を持ち、シカと違い生え変わりが無い一生ものの角です。

またシカは群れを作って行動するのに対し、カモシカは群れを作らず、それぞれが一定の行動範囲に定着しています。1頭の行動圏は雄15ha、雌10haほど。縄張り意識が強く同性に対しては排他的だが、 雄と雌で縄張りが重なっているとつがいになり、この関係が長く続く。 繁殖期は10月に始まる。雄はすぐ離れてしまい、雌は半年後の春から初夏に1頭出産し1年間は子連れでいる。寿命は15年ぐらいです。

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4〜5mぐらいに接近しても逃げることなく反芻を始めました。30分ほど付き合ったのち撮影者の方から離れました。

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カモシカの角輪:角には毎冬に形成される年輪(角輪)があり、年齢を推定することができます。

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過去に撮影したニホンカモシカ(上:2007年3月28日、下:2010年4月4日)


【ムササビ】
ムササビはリスの仲間ですが、前足と後足の間には大きな皮膜があり、樹間を滑空することができます。樹洞などを利用して巣穴を作ります。似た仲間にモモンガがいますが、一番の違いは大きさです。滑空している姿は、ムササビは座布団ほど、モモンガはハンカチ程度です。
ムササビもモモンガも、やどりき水源林に生息しているのが確認されています。いずれも夜行性ですが、運がよければ日中にムササビの昼寝姿?を見ることができます。

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スギの樹洞を利用した巣穴から、ムササビが顔を出していました。かなり眠そうです。

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巣箱から顔を出したムササビ。ぱっちりした目がかわいいですね。

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かながわ森林インストラクターの会は、県と協働して、ムササビやモモンガの保護を目的に、それぞれにあった巣箱を作成して水源林内に設置してきました。中には経年変化で痛みが出てきたものもあり、それらについて、新しいものに取り換える作業を行いました。(写真は新しく作成した巣箱(2016年6月作成)、取り換え時(2016年10月)の様子です。)
上のムササビは、この時に取り換えた巣箱を使用していました。
posted by Forester at 17:24| やどりき動物

2017年04月20日

4月のやどりき水源林

4月のやどりき水源林はにぎやかです。マメザクラ、ソメイヨシノ、ジュウガツザクラなどの桜の仲間が開花し、クロモジ、アブラチャンなどは林間で控えめに咲いています。
足元では、ヤマルリソウやフデリンドウ、ミヤマキケマンなどを観察することが出来ます。
そして春は小鳥たちにとって恋の季節。林の中からは、シジュウカラ、ホオジロなどのさえずりが聞こえ、姿を見ることが出来ます。
カエルたちも卵を産み始めました。

【足元の花】
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ミヤマキケマン:「ミヤマ」の名があるが、深山に生えるわけではありません。日当たりのよい山地や林の縁に多く生えます。

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フデリンドウ:「リンドウ」は秋の花のイメージが強いが、春に咲くのもあります。最も普通なのは本種で、日当たりのよい林縁や草地に生えます。つぼみの形が筆の穂先のようなのでこの名が付きました。

【鳥】
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ホオジロ:名は「頬白」ですが、実際に細長い白斑があるのは目下あたり。繁殖期には高い枝先で長く美しい声でさえずります。


【カエル】
やどりき水源林では、ヤマアカガエル、アズマヒキガエル、カジカガエルの3種類のカエルが確認されています。4月中旬以降からは、カジカガエルの鳴き声を聞くことが出来ます。

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ヤマアカガエル:体長は5cmほど。色は赤みがかった褐色で、背面には筋状の隆起(背側線)がある。ヤマアカガエルの卵塊は、ゼリー状のかたまりになっています。

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アズマヒキガエル:体長は10cmを越え、どっしりと大きい。アズマヒキガエルの卵塊は、透明な長いチューブ状になっています。

【アズマヒキガエルの抱接】
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下にいるのがメス。上に重なって抱きしめているのがオスです。ほとんどのカエルがメスの方が大きく、2倍ぐらい違うものもいます。
水のない所で暮らしているカエルも、受精する時は水辺にやってきます。そして水の中で、オスがメスの背中の上に乗り、前肢でメスの腹を抱きかかえます。これは“抱接”と呼ばれる行動で、体外受精のカエルは“交尾”はしません。 オスがメスの腹を強く押すことにより、メスは卵を放出します。オスはその上から精子を放出して受精させるのです。
繁殖期のオスにはメスを抱接する際に滑り止めとして後肢にコブ(婚姻瘤)ができ、これでメスに抱きつき、ちょっとやそっとのことでは離れることがありません。
posted by Forester at 13:12| 水源林トピックス

2017年03月21日

やどりき事業部会活動説明会を実施しました

かながわ森林インストラクターの会の活動拠点「やどりき水源林」では、水源林の保全・再生活動に対する理解を深めることを目的に、水源林を巡る案内人活動や、植物、動物、土壌水生生物などの調査活動を行っています。そして、毎年3月には登録会員が集まり、この一年間の活動報告、来期に向けての活動計画を話し合います。
今年は、3月19日に話し合いを行い、その後林内の清掃を行いました。

<やどりき事業部会活動説明会>
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やどりき事業部長からの全体説明

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各班(植物、動物、土壌水生生物)の報告。写真は植物班の報告。

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全体説明・報告の後は、各班に分かれて来期の活動の立案を行いました。写真は上が動物班、下が土壌水生班。

<林内の清掃>
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近年、やどりき水源林でもヤマビルが多く発生しています。ヒルは落葉の下に隠れていることが多いので、周遊道の落ち葉掻きを行いました。

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林内のゴミ拾い。多くのゴミが集まりました。

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樹名板は、コケで文字が読みにくくなっているものもあるので、消毒液で表面をきれいにしました。

<やどりき水源林の風景>
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やどりき水源林にはミツマタの群落が点在しています。例年、3月中旬〜4月上旬に花の見頃となりますが、今年は開花が早いようで、すでに満開でした。

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やどりき水源林入り口のゲート横に「寄大橋」があります。昨年秋に改修して朱色のアーチが鮮やかです。木々の葉が色づけば、赤と緑のコントラストが見事になるでしょう。
posted by Forester at 16:04| 水源林トピックス

2017年02月06日

第8回森林文化講演会

かながわ森林インストラクターの会では、森林文化部会が中心となり、森林や自然や環境などの専門家を講師としてお招きし、会員及び広く一般市民に参加を呼びかけ、毎年1回森林文化講演会を実施しています。
今年度は、長年シカと植物群落の研究をし、そのほかの野生動物の研究も取り組んでこられた、高槻成紀氏(麻布大学いのちの博物館開館上席学芸員)を講師として招き、「日本の森林とシカ問題」と題し講演をしていただきました。

従来からシカの増加に伴う食害が問題視されてきましたが、それ以外にも、野生の動植物に多大な影響を及ぼし、生態系に甚大な被害を及ぼしていること。また、食害により地肌が現れ、土砂災害の危険が広がっていることなど、豊富なデーターを元に解説していただき、改めてシカ問題の深刻さを理解することができました。

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講演会入り口(桜美林大学 PFC(プラネット淵野辺キャンパス))

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受付(桜美林大学 ECO・TOP(インターンシップ)の学生にも手伝ってもらいました。)

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主催元の森林文化部会長のあいさつ

講演風景
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質疑応答

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書籍販売「シカ問題を考える」

posted by Forester at 17:25| インストラクター活動全般

2017年01月16日

2017年山の神祭

1月15日(日)この冬一番の寒さの中で、恒例の山の神祭が、やどりき水源林の山の神祠前で執り行われました。1期から14期まで総勢50数名の森林インストラクターが集まり、今年の山の作業の安全を祈願しました。
祝詞を捧げ玉串を奉納した後、神前に供えた御饌御酒(みけみき)を参列者で戴きました。祭事終了後の直会は無礼講です。奉納されたお酒や、縁起もののスルメやめざしをいただき、会員間の親交を深めました。お酒の量も多く、最後は皆さんすっかり出来上っていた様です。

@玉ぐし準備.JPG
準備@:玉串の作成

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準備A:、しめ縄に紙垂(しで)を取り付け

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お供え:季節の野菜・魚介類、米、塩、お神酒など

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お祓い:修祓(しゅうばつ)の儀

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祝詞(のりと)奏上

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玉串奉奠(たまぐしほうてん)

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直会(なおらい)の儀

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山の神の祠下にある休憩棟前で、祭事終了後の無礼講が行われました。

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奉納されたお酒や縁起物の数々

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会話も弾み、お酒の方も急ピッチで進んでいます。
posted by Forester at 22:51| インストラクター活動全般

2016年12月19日

しめ縄作りと山の神祠の大掃除

やどりき水源林の林内には、山での活動の安全を祈願する「山の神」を祀る祠があります。そして、毎年年末には祠の大掃除を行っています。今年も森林文化部会が主催し、有志が集まり、しめ縄作りと大掃除を行いました。

しめ縄作り

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藁に水をかけ湿らせます。こうすることで藁の強度が上がります。

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木槌で叩いてしごきます。藁に柔軟性が加わり作業がしやすくなります。

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藁を束ねて3分割し、縄ないを行います。

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ごぼう締めの完成

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ごぼう締めした藁を丸く束ねます。

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完成。これに、紙垂(しで)や橙などをあしらえます。

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山の神の祠に飾るしめ縄は、藁をつぎ足しながら長くして行きます。

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紙垂(しで)も用意します。

山の神祠の大掃除

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先ず、祠の周囲をきれいにします。

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ご神木もきれいに。

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古いしめ縄は取り外します。

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祠のしめ縄を新しいものに付け替えました。

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鳥居のしめ縄も新しくしました。

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大掃除、しめ縄の取り換えが終わり、正月に行う山の神祭の準備が出来ました。
posted by Forester at 16:59| 水源林トピックス

2016年10月29日

落ち葉のプール

森林インストラクターと小学6年生で、小学校の校庭に落ち葉のプールを作りました。
足で踏んで! 手で触れて! 匂いを嗅いで! サクサク耳で聞いて! 彩りを目で楽しんで! 秋の自然の贈り物。 みんな一緒に全身で楽しむ落ち葉のプール。

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横木と杭木は、学校林の枝打ち材を使用しました。プールは縦横3m。まず森林インストラクター(4名)が杭木と一番下の段の横木を設置しました。

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杭木は大きな木槌(掛矢)で打ち込みます。地面からの高さは約5Ocm。

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丸太筋工の要領で、シノーを使って横木と杭木を番線で締め付けます。

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子供たちも交じって番線の処理。

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長い横木は切り取ります。

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皆で協力すると、作業もはかどります。

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事前に集めておいた落ち葉を敷き詰めて行きます。

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落ち葉を均一にならして行きます。

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手作り感満載の落ち葉のプールが完成しました。

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落ち葉のプールで遊んだあとは、しばらく置いておきます。そうすると土壌生物が分解して堆肥となり、樹木の栄養となります。土壌生物を中心にした生態系(食物連鎖)の講話を行いました。
posted by Forester at 17:45| インストラクター活動全般

2016年09月15日

下草刈り

県立21世紀の森で行った「県民参加の森林づくり」、今年度最後の下草刈りです。
平成25年度の成長の森事業で植栽した苗木(無花粉スギ)は、3年で3m以上に達するものもあり、立派に成長していました。今年2回目の下刈ですが、下草は夏の間にかなり伸びていました。

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作業前:植栽地を左右に分ける中央通路に整列

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作業開始:中央通路から左右に、大カマで刈りこんでいきます。

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作業後:最初分からなかった中央通路が、はっきりと見えるようになりました。

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植栽した苗木を傷付けないように、丁寧に刈り込みます。

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十分に間隔をとりながら、作業を進めて行きます。

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この時期注意が必要なのはスズメバチです。案の定、伐採後の残木の中からスズメバチが10匹ほど表れ、ハチジェットで駆除し、この場所は避けて作業を行いました。

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植栽後まだ3年ですが、中には3mを超える苗もあり、生育状況は上々です。

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すっかりきれいになった植栽地。30〜40年たてば、向こうに見えるような立派なスギ林になるでしょう。
posted by Forester at 22:28| インストラクター活動全般

2016年08月06日

夏のやどりき水源林


夏本番!やどりき水源林は気温も市街地より2〜3℃低く、寄沢のせせらぎに足を入れると一層涼しさを感じます。 そして、水辺や林道では、夏の花や虫たちに出会うことが出来ます。

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Aタマアジサイ開花.jpg
タマアジサイ:タマアジサイのつぼみは丸くて目立つのですぐ識別することが出来ます。
8月初旬頃、丸いつぼみが次々と裂けるように開花し、淡紫色の小さな両性花の周りに花弁4枚の白色の装飾花が縁どります。

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キハギ:漢字で”木萩”と書きます。一般に萩類はしだれるが、キハギの茎は完全に木になるため”木のハギ”と言うようになったそうです。

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コマツナギ:漢字は”駒繋”。茎は細いわりに丈夫で、馬さえも繋ぎ止めておけるという意味だとか。

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ミゾホオズキ:果実がホオズキに似て、溝(水が染み出ているようなところ)などに生えるのでこの名があるそうです。

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キツネノボタン:葉が牡丹に似て、毒(いやなもの=キツネ)があるところからこの名が付いたと言われています。

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マツカゼソウ:ミカン科で葉には独特の臭いがあります。そのためかシカが食べず、シカの多い地域でも食べられずに残っています。

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クロコノマチョウの幼虫:二本の角に愛嬌のある顔だち。ススキの葉を平行にくるっとまるめて中に入っています。

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フクラスズメの幼虫:刺激すると危険を感じて、頭をブンブン振り回し、防衛します。

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ナナフシ:植物の中に入り込むと、姿が分からなくなります。

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寄沢を遡上すると、ひんやりした空気に包まれ夏の暑さを忘れます。特に堰堤の下ではしぶきがふりかかり、爽快です。
posted by Forester at 23:36| インストラクター活動全般

2016年07月02日

ホタルブクロの作戦

梅雨のころ、林の縁などで見かけるホタルブクロ。子供達がこの花の中にホタルを入れて遊んだことから、ホタルブクロの名前がついたと言われますが、実際の語源は、花の形を提灯に見立てた、火垂袋(ほたるぶくろ)説の方が説得力がありそうです。
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このホタルブクロ、人里に近いところに多いホタルブクロと、山地から高山の礫地など、標高の高い場所に生えるヤマホタルブクロの2種類あります。やどりき水源林で見かけるのも、多くはヤマホタルブクロです。
外見はよく似ていますが、ホタルブクロには、がく片の間に反り返る付属片(小裂片)があるのに対し、ヤマホタルブクロにはそれがなく、ふくらみがあることで区別することができます。
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(野草 見分けのポイント図鑑(講談社)より <クリックで拡大します>)

ホタルブクロの特徴の一つに、雄しべが花粉を放出する時期と、雌しべが成熟して柱頭が受粉可能になる時期が、時間的にずれている。というのがあります。
まず、花が開花する前後は雄しべが発達し花粉を放出します。そして花が成熟すると、柱頭が3裂して、雌しべの時期となります。この段階ではハチにより送粉された後なので花柱には花粉は残っていません。
すなわち同じ花で、雄から雌に移り変わるというわけです。

なぜこのような仕組みをしているのか。それは、自家受粉を防ぐ目的があるからです。自家受粉では遺伝子の組合せのバリエーションが広がらない、あるいは近交弱勢とか問題が多い。それを防ぐための仕組みが”雌雄異熟”というわけです。

ホタルブクロの花粉を運ぶ有力な担い手が、マルハナバチです。ホタルブクロの花の特徴は、花の入り口が狭い、花は細長く下を向いている、蜜は花の奥にある、などです。
入口が狭いので蝶などは入れない。小さい虫は花の内側で滑って蜜までたどり着けない。ところが、マルハナバチは花柱と花の内側に潜り込み、長い口で蜜を吸うことができます。そしてこのとき、花粉をしっかりつけます。
マルハナバチにとっては蜜を独占でき、ホタルブクロにとっても、花粉を付けたマルハナバチは確実に他のホタルブクロに行き受粉してくれる。お互いに、Win-Winの関係があるというわけです。
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(信州大学理学部生物科学科 市野研究室 研究内容より <クリックで拡大します>)
posted by Forester at 14:47| やどりき植物