
このホタルブクロ、人里に近いところに多いホタルブクロと、山地から高山の礫地など、標高の高い場所に生えるヤマホタルブクロの2種類あります。やどりき水源林で見かけるのも、多くはヤマホタルブクロです。
外見はよく似ていますが、ホタルブクロには、がく片の間に反り返る付属片(小裂片)があるのに対し、ヤマホタルブクロにはそれがなく、ふくらみがあることで区別することができます。

(野草 見分けのポイント図鑑(講談社)より <クリックで拡大します>)
ホタルブクロの特徴の一つに、雄しべが花粉を放出する時期と、雌しべが成熟して柱頭が受粉可能になる時期が、時間的にずれている。というのがあります。
まず、花が開花する前後は雄しべが発達し花粉を放出します。そして花が成熟すると、柱頭が3裂して、雌しべの時期となります。この段階ではハチにより送粉された後なので花柱には花粉は残っていません。
すなわち同じ花で、雄から雌に移り変わるというわけです。
なぜこのような仕組みをしているのか。それは、自家受粉を防ぐ目的があるからです。自家受粉では遺伝子の組合せのバリエーションが広がらない、あるいは近交弱勢とか問題が多い。それを防ぐための仕組みが”雌雄異熟”というわけです。
ホタルブクロの花粉を運ぶ有力な担い手が、マルハナバチです。ホタルブクロの花の特徴は、花の入り口が狭い、花は細長く下を向いている、蜜は花の奥にある、などです。
入口が狭いので蝶などは入れない。小さい虫は花の内側で滑って蜜までたどり着けない。ところが、マルハナバチは花柱と花の内側に潜り込み、長い口で蜜を吸うことができます。そしてこのとき、花粉をしっかりつけます。
マルハナバチにとっては蜜を独占でき、ホタルブクロにとっても、花粉を付けたマルハナバチは確実に他のホタルブクロに行き受粉してくれる。お互いに、Win-Winの関係があるというわけです。

(信州大学理学部生物科学科 市野研究室 研究内容より <クリックで拡大します>)